旧渡辺甚吉邸移築プロジェクト


「旧渡辺甚吉邸」移築について

旧渡辺甚吉邸(昭和9年竣工 東京都港区白金台)は日本近代建築史上 屈指の住宅作品と言われています。諸般の事情により解体されることとなったため、大学関係者や有識者が 旧渡辺甚吉邸保管検討委員会を立ち上げ、その要望で前田建設工業㈱が 調査・解体・部材保管を実施しました。

そしてこの度、社有地に旧渡辺甚吉邸を移築するプロジェクトを開始しました。

「旧渡辺甚吉邸」とは

「旧渡辺甚吉邸」は銀行業を営む岐阜・渡辺家の14代となる渡辺甚吉氏の私邸として、戦前日本の経済繁栄期に建設されました。同郷出身の建築家・遠藤健三を伴い欧米見聞を行なった後に、チューダー様式に基づき遠藤が設計し、照明器具などの細部装飾を早稲田大学教授の今和次郎に依頼し、かつ全体的な計画を明治後期より洋風住宅の啓蒙とその普及に尽力していたあめりか屋の技師長・山本拙郎が担当しました。その後スリランカ駐日大使公邸、結婚式場として使い続けられ、現在まで当初の姿を奇跡的に留めています。また同作品は考現学者今和次郎の数少ない彼の高品質の装飾を確認できる最重要作品です。

旧渡辺甚吉邸

写真撮影:傍島利浩

特に以下の傑出点から同建物は後世に伝えられるべき珠玉の作品といえます。

1)国内の数少ない本格的チューダー様式であり、細部装飾に極めて高度な技法が用いられている。
2)基本計画から細部計画に至るまで当時の日本の住宅建築の最高水準の経験、知見が投入されたこと。
3)大切に使われ続け特徴ある装飾を含め当初からの姿がほぼ完全に保たれていること。
4)関連文献や調度品が残され、多くの紹介書、客観的な文化価値が豊富であること。

旧渡辺甚吉邸

写真撮影:傍島利浩