飯田橋駅西口地区第一種市街地再開発事業
計画における5つのテーマ
- 都市部の交通結節点にふさわしい飯田橋駅前の基盤整備
- 飯田橋地区のランドマークとなる業務・商業・居住機能の集積
- 外堀や外濠公園など自然を活かした豊かな緑の創造
- 歴史的環境を活かした地域のアイデンティティの確立
- 駅前の回遊性を生み出す豊かな歩行者空間の創造
- BIMによる設計妥当性の確認
- データのプレゼンテーション活用
- 環境負荷の検証
- デジタルモックアップによる施工確認
- 施工の省力化や安全への寄与
既存
解体後
竣工時
敷地周辺と解体建物を再現したBIM│飯田橋駅周辺を再現し建替前と後をウォークスルーで比較できる
フェーズ1 | 2009年7月
- 基準階の3次元設計(構造/設備の干渉チェック、貸室形状確認、共用部形状確認)
- 屋上の次元設計(外装と構造の入力、ゴンドラやメンテナンス動線の入力)
- PAL値の算出(デザインと使用材によるバリエーション検証)
- 執務空間の照明シミュレーション(外観での照明の見え方、室内の外光を含む明るさ感の確認、省エネ効果検証)
基準階の3次元設計│意匠・構造・設備を統合した基準階BIMは初期に入力され問題点の抽出に活用された
PAL値の算出│開口部形状とガラスのバリエーションで複数案をタイムリーに算出
執務室内の気流解析│建築データをIFCで変換し解析ソフトへ渡し、天井のプロットや家具のレイアウトも再現する
断面温度コンタ
平面気流ベクトルと温度コンタ
執務空間の照明シミュレーション│建築データを照明解析ソフトへ変換、外部自然光と照明器具をミックスした解析が可能としている
フェーズ2 | 2010年4月
- 低層部の3次元設計(構造/設備の干渉チェック、共用部形状確認、パサージュのデザイン検討)
低層部干渉チェック│ 設計段階で設備を入力しレビューを実施、納まり上の問題を予見する
低層部の3次元設計│低層部のデザインは変更が繰り返されるが、問題点を抽出する意味でも早期にBIM化する意味はあった
フェーズ3 | 2011年6月
- 地下躯体の出来形入力(スロープ形状、打設工区割検討、設備データ統合)
- 上部鉄骨の出来形入力(全般ディテール確認、施工手順検討)
- 屋上の設備データ統合(納まりとメンテナンス動線の確認)
- 施工仮設計画
仮設計画シミュレーション│設計のBIMに仮設情報を追加し時間軸(4D)を与えて視覚化する
外装CWの検討用モデル│施工段階ではアルミ枠形状含めてさらにモデルの密度が上がる
地下躯体のコンクリート強度│コンクリート強度が切り替わる箇所を視覚化し確認
地下躯体と上部鉄骨の詳細データ│構造設計データは着工時にさらにファブリケーションを意識した詳細なデータへとブラッシュアップされる
地下躯体の打設手順の確認現場躯体図ベースの地下躯体BIMに打設手順を付加した4Dシミュレーション
屋上・地下の設備データ統合設備設計データは着工後に設備サブコンにより設備施工データへとブラッシュアップされる
前田建設╳日建設計
山崎隆盛
日建設計 執行役員 設計部門
山崎グループ代表
大村高広
日建設計 プロジェクト開発部門
都市開発グループ副代表
鈴木章夫
前田建設工業 建築事業本部
企画・開発設計部長
グランドデザイン・コンセプトは「粋とエスプリ」
鈴木警察病院の移転が発表された2001年に、前田建設は日建設計さんとともにワーキンググループを立ち上げ、再開発に必要な都市計画等の課題を逐次解決しました。本再開発事業では、全体の容積率930%のうち、600%は業務施設、260%は住居施設、70%はその他関連施設ならびに商業施設という上位計画のもとで、日建設計さんと前田建設が設計JVを組ませていただきました。
山崎本再開発事業は敷地が非常に細長いことと、千代田区側の周辺には皇居をはじめ靖国神社や外濠公園などの広大な緑があることが1 つのポイントです。一方、外濠を挟んだ反対側の新宿区には江戸情緒漂う神楽坂の町並みがあります。これが全体デザイン計画に着手するきっかけになりました。再開発組合のご要望により、海外の著名建築家を含めたデザインコンペが行われましたが、私たちは当初からプロジェクトに関わってきたので海外チームにデザインの主導権を渡すことは絶対に避けたいと考え、「粋とエスプリ」というこの地域の特徴を明快に表したコンセプトでコンペを勝ち抜きました。「粋」は神楽坂の昔ながらの風情を表現し、「エスプリ」はこの地に多く住むフランス人の洒脱さを表現したものです。
2面の異なる基調色とガラス面の重なりで個性を表現
山崎まず細長い台形の敷地形状を活かし、幅の狭い方に住宅棟、広い方に業務・商業棟を配置しました。超高層の建物の重量感を軽減するために外観をいくつかの面に分割し、ガラスを多用して統一感を図り、軽快でシャープなデザインにしています。外濠側と皇居側の2 面に異なる色調を象徴的に使用。外濠側は、神楽坂の黒塀のブラック、クールなグレーやシルバーと、縦のルーバーで日本的な繊細さを基調にして「粋」を表現。皇居側は、フランスから連想されるシャンパンゴールドと同系色を採用し「エスプリ」をデザインしました。西日を防ぐ役割も果たす外濠側の縦ルーバーと、皇居側の水平ルーバーが、デザインの2面性を引き立てます。
道路を整備し、環境にも配慮
災害時には一時避難所として活用
鈴木外濠側の建物ファサードの低層部のデザインとランドスケープも、本再開発事業の特徴ですね。
山崎3層までの商業エリアは、店舗スペースを細かく分節して集積させ、道行く人々が立ち寄りやすい賑わいを演出しています。また、2棟のタワーの2階部分をパッサージュ状の広場でつなぎ、皇居側と外濠側とをつなぐ貫通道路として敷地内のエリアを分断しないよう配慮しました。さらに、足元にはふんだんに石を使って江戸の歴史や文化を紡彿とさせる見附の雰囲気を演出し、敷地には数種類の桜を植えて周辺に現存する桜並木を補強する計画です。
鈴木外濠公園通り側を敷地境界から都市計画条件により10mセットバックすることは、都市防災と街並み形成の観点からも大変有効であると思います。
大村敷地北側の外濠公園側の道路幅員は従前の約5.0m~7.5mから12mに拡幅し、6mの歩道状空地を整備して、あわせて10m近い歩行者空間を創出します。同時に、南側・西側・東側の道路も整備して、安全で安心な歩行空間をつくります。また、敷地内に300㎡ ~1000㎡の広場を3カ所設け、通常は賑わいの場とし、震災発生時には人々が安全に一時避難する場として整備する計画です。こうした都市計画上の公共貢献に対し、容積率の特典をいただきました。環境負荷低減の効果については、緑豊かなこの地の良質な環境を大切にしたいと考えました。また、CO₂削減についても極めて高い効果をめざし、CASBEEの最高クラスであるSクラスを取得する予定です。外濠を通り道にして流れる風を有効活用できるよう、さまざまな検討をしました。本再開発事業では日本で初めて、設計が本格的になる前の都市計画の段階で、区域内のCO₂排出原単位を業務の平均原単位に対して60%減を目標とし、そのためのさまざまな工夫を盛り込みました。これにより、開発自体が省資源・省エネルギー・環境負荷低減につながったと感じます。
鈴木2014年秋に完成し、既存の街の400年の歴史と融合して新しい魅力的なまちが誕生します。さまざまな視点から見ても文化が薫るツインタワーは飯田僑のランドマークとなり、未来にその姿と人々の思いを伝え続けることと思います。
平和 東上野一丁目新社屋
※1 RP:RapidPrototyping▷3D-CADのデータを利用して試作品をつくること
RP (Rapid Prototyping): Use of 3D-CAD data to make prototypes
※2 CFD:Computational Fluid Dynamics▷液体の運動をコンピュータで解析・シミュレーションする手法
CFD (Computational Fluid Dynamics): A computerized analysis and simulation method for the motion of fluids
ダブルスキンの環境性能
IM タワープロジェクト
住田町役場
意匠・構造・設備・備品を統合した3次元モデルの活用
BIMデータを動画で閲覧できるようにした。
※現在ホームページは閉鎖
木造仕口部分のデジタルモックアップ
作業所でのBIM講習風景
3Dプリンタによる出力
飯田橋MKビル
外観パース
外装を透視したBIMイメージ
施工中と竣工時のイメージ共有
社外と協業する BIM の構築
設計・施工におけるBIMのフロー
ヨロズ グローバルテクニカルセンター
外観
BIM を用いた合意形成と施工検証
国道からのサイン検証
エントランスの館名板検証
パラペット外観写真と製作図
東側サインの検証
パラペット施工写真