広島平和記念公園前に立地する都市型集合住宅である。公園超しに世界遺産である原爆ドームとリバーサイドを望む稀有な立地条件を生かしつつ、集合住宅としての事業性と広島という都市の場所性を体現する建築が求められた。

外観のデザインコードには、相対する平和記念資料館（丹下健三作）を参照し、素材（コンクリート打放、ガラス、石調塗装）と限定された色彩（白・グレー・グリーン）による垂直・水平線のデザイン構成とした。広島市の厳しい景観規制をクリアしつつ、集合住宅の用途でありながらも、一種のモニュメント性を備えた現代的なデザインを実現している。

竣工後、イサム・ノグチによる平和大橋から望むその姿は、公園の緑をはじめとする周囲の環境と呼応しており、広島平和記念公園という非常に象徴性の高い場所に建つ建築の在り方として、一つの方向性を示している。