ICI建築講演会「藤本壮介 建築を語る」が開催されました

2026.03.24

2025年9月17日に前田建設本店にて、ICI建築講演会を行いました。ICI建築講演会は、広く社会的な活動を続けてこられた著名な建築家をお招きして、前田建設の主催で年2回開催する講演会です。プロデューサーの安東孝一氏による講師へのインタビューを通じて、これからの社会における建築のありかたとデザインの問題をトータルに考えます。

4回目を迎えた今回は建築家の藤本壮介氏をお迎えし、建築について語っていただきました。90分を超えるご講演、その後インタビューや質疑応答が行われ、現地参加・オンライン合わせて約500名を超える方にご参加いただきました。

講演会

建築をつくる上で根底にあること・つくり出す建築への思い
「Between Nature and Architecture」


高校まで自然豊かな北海道の地で育ち、それが自身の原風景である。東京の住宅地に移り住んだ時、東京の街は電線・垂れ幕・小さな看板・自転車などでごちゃごちゃしていて原風景とは見かけは違うが、何故か森と似ているのではないかと感じた。何故そう感じたのか。自然の森は葉や枝でやわらかく守られているが、閉ざされていないためどこでも行きたい方向にいける。守られているが開かれている。そして移り住んだ東京という街も、ごちゃごちゃした小さなものに守られているが閉ざされておらず、開かれている。見かけは正反対だが場の成り立ちは同じであると気付いた時、建築と自然は分けて考えるものではなく、つながっているものと考えるようになり、今でも建築をつくる上で根底にある考えとなった。また、森美術館の展覧会(※1)の準備を通し、色々な出来事が集まった時に違いを保ったまま共存し、緩やかにつながることができる「森」という場所が一つのモデルとなるのではないかと考えた。対立が多い現在の社会の中で、矛盾や対立を含めた全てを受けとめることができる「森」、そういった緩やかな統合を建築としてつくって行きたい。

L'Arbre Blanc

南フランスの地中海に面したモンペリエの土地に、街を象徴するような集合住宅を建てたPJ。夏冬問わず屋外で過ごしやすい気候をいかし、一つの部屋から複数のバルコニーが外に突出したような建物とすることで、頻繁に外に出て生活するような仕組みをつくり出した。その仕組みによってモンペリエで生活することの楽しさが外に溢れ出し、それが建物となっている。

ⒸIwan Baan

House of Music Hungary

ハンガリーの音楽の都であるブダペストで、大きな公園の中に音楽の館をつくるというコンペティションから始まったPJ。自然と構築環境の境界をなくし、森そのものが音楽ホールのような空間とするために、幹に見立てたガラスの壁で建物を囲み、森の葉に見立てた分厚い屋根をかける構成とした。建物の地下に展示室、分厚い屋根に音楽教育施設、ガラスに囲まれた部分に音楽ホールとロビーを配置し、緩やかにつながる開放的な空間とした。音楽ホールや野外ステージではイベントが行われ、多くの人が自然と音楽を楽しむことができる施設となった。

ⒸIwan Baan

太宰府天満宮 仮殿

太宰府天満宮御本殿の大規模改修に伴い、改修期間中の仮のお社を設計したPJ。自然素材でつくられた御本殿の大屋根に応答できる建築とするため、森そのものが浮かび上がるような建築を目指した。半円状の傾斜した屋根に木々や下草を配置し、周りの木々がすべてつながって見えるようにすることで、御本殿に応答する森のような建築となった。

ⒸDaici Ano

仙台市(仮称)国際センター駅北地区複合施設

仙台に計画中の音楽ホールと震災メモリアル拠点等を融合した複合施設のPJ。一部反り返ったスラブが立体的に重なっているような形状で構成することで、床の上下に様々な空間が生まれる。その空間は緩やかに共存し、時には大ホールが開くことで遠くまで広がり、目には見えない大きなつながりとなるという提案である。震災に対する様々な思いが多様なまま共存する施設を目指している。

ⒸSou Fujimoto Architects

(仮称)飛騨古川駅東開発

飛騨古川の街に大学をつくりたいという地元の若者の声で立ち上がったPJ。大学以外にも商業施設・子供の遊び場・温浴施設などの多機能な施設を計画している。今飛騨にない新しい風景、かつ飛騨らしい風景をつくりたいという思いから、大きな一枚の屋根広場の下に多機能な施設を分棟で配置し、屋根に開いた穴からそれぞれの機能が顔を出すことで実現させる計画としている。

ⒸSou Fujimoto Architects

NOT A HOTEL ISHIGAKI“EARTH”

石垣島に設計したホテル。広大な美しい環境をいかした一棟とし、すり鉢状の巨大な庭を設けることで、土地・地球と一体化するような空間を作り上げた。

ⒸNewcolor inc.

大阪・関西万博「大屋根リング」

2020年春に万博のプロデューサーの依頼を受けた。多様性が分断も生んでいる現代社会の中で、多様な素晴らしい文化がつながる可能性がある、その無邪気なフォーマットにとてつもない価値があると気づき、引き受けた。本万博の会場デザインコンセプトである「多様でありながら、ひとつ」を伝えるために、世界の誰が見ても調和やつながりを感じる円の形状を採用した。多くの来場者を分散させ、かつ日差しや雨から守るために大屋根リングとし、屋根の上から全パビリオンが集約している風景が見えるように設計した。
構造は世界的に推進されている木造に着目し、日本の伝統や豊かな森林資源を世界に発信している。大屋根リングの施工は、工区ごとに3つのJVが担当。日本の伝統建築工法「貫接合」を最新技術と組み合わせ、各社がそれぞれの組み方で実現した。一周約2㎞、高さ約20m(外側)の大空間に3.6mピッチで柱を配置することで、壮大な大聖堂のようなスケールにヒューマンスケールな空間が内包され、違うスケールを共存させた。また大屋根リングが円の形状で空を切り取ることで、集まった人々が一つの空を共有し、同じ体験をすることで生まれるつながりをつくりだしている。

ⒸIwan Baan

ⒸIwan Baan

インタビュー

①藤本さんにとって模型とは何か?

 藤本氏:「考えることそのもの。模型をつくることで、頭で考えることとは別に手で考えることができる。それはスケッチでも同じ。またチームで会話し議論することも考える手法の一つ。そういったいろいろなモードで考えることで建築を生みだしている。」

質疑応答

①最近下町でも再開発で高層ビルが建ち、東京都の雑木林のような原風景が変わりつつある。その風景についてどう思われるか。また再開発のPJに携わる中でどのような新しい原風景をつくっていくべきとお考えか。

「再開発のPJの中でも人間の営みと空間が結びついた場所をつくりたいと考えている。ディベロッパーも意識しているがまだ形になっていないのが現状。経済性を鑑みながら魅力的な街を未来に残すためにどうするか?それを具現化し、その魅力を発信していくことが我々に必要なことだと思う。」

②次の時代・未来はどうなっていくと思うか?そこに建築はどうあるべきとお考えか。

「現在は違いをあげて争ったりする社会である。違いをリスペクトし、チャレンジすることを応援する。そんな世の中になってほしいし、そうなるような建築を作っていきたい。」

③どの建物にも白を使われていることが多いが、どのように色を選定して設計されているか。

「白は時間や環境によって常に変化する。建物は建った後そこに残るが、白はその瞬間の時間や環境を映し出す他にない色。そのため白を選定することが多い。
またコルビュジエがつくったラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸という住宅を見たとき、パリのクリーム色の街並みの中で白の住宅が鮮やかに輝いていて、新しい時代をつくろうというコルビュジエの気合を目の当たりにした。その記憶が原点となっている。」

講演会終了

改めて藤本先生、ご講演いただきありがとうございました。
第4回ICI建築講演会も多くの方にご参加いただき、盛況のうちに終了することができました。ご参加いただきました皆様改めてありがとうございました。ご興味のある方は、今後も同様の講演会を継続して開催してまいりますので、ぜひお申込みください。

(※1)森美術館で開催した大規模個展「藤本壮介の建築:原初・未来・森」(2025年7月2日~2025年11月9日)

アーカイブ配信のお知らせ

本講演会のアーカイブ配信を期間限定で実施します。
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