「手しごと」
藤森先生の「建築たんてい」を読んで、いつか見てみたいと思っていた今先生の作品がふんだんに詰まった応接室。
こちらのお部屋はどこもかしこも凝りに凝った見どころだらけですが、住まいとしての落ち着きも感じられ、ツヤツヤな家具達は当時の職人さん達の手しごとによるものなんだなと思いを馳せました。
10月4日茨城県取手市のICI総合センターにて開催された「甚吉邸 建築写真講座」、その際に撮影された作品の数々を公開します。
どうぞお楽しみください。
※あいうえお順
傍島利浩氏からのコメント
椅子の背もたれはシルエットによってフォルムが強調され、天井のレリーフは鈍い光によって拡張高く映し出されています。
甚吉邸でしか味わえない、静寂で重厚感のあるワンシーンです。
傍島利浩氏からのコメント
障子を開けて柱を見せようとする試みが新鮮に感じました。和と洋のデザインを捉えつつ、奥行きと適度な距離感もあって、外へ抜け出る視線が気持ちいいです。
傍島利浩氏からのコメント
他のどなたとも違うポイントを押さえていて、階段でも通路でもない、見逃しがちな空間を捉えています。
ちょっと思いつかないような平面構成は新鮮でした。
傍島利浩氏からのコメント
手前のアーチと小上がりにサンドされることによって廊下が際立ち、迷いがない建築的視点には、ぐっと引き込まれます。
他の2点も同様に、その先を感じさせるストレートフォトグラフィー。
傍島利浩氏からのコメント
棚の側板、出節丸太、襖の引き手という3点の意匠が、絶妙なバランスで整い、主張しています。斜めから狙った角度によって、床の間という局所的な空間も感じさせます。
傍島利浩氏からのコメント
1枚目は、額に映り込んだ照明器具まで取り入れた、大、中、小とだんだんと小さくなっていく照明三兄弟。
2枚目は、一瞬どこにいるのかわからなくなるような、エッシャーを彷彿させるような構成。
どちらも程良い遠近感と連続性があり、とてもファンタスティックです。
傍島利浩氏からのコメント
暗くて見えないはずだけど、見えるような気がする。
静けさが人の想像力を掻き立てる。
陰翳礼讃。
傍島利浩氏からのコメント
撮影者の緊張感のあるフレーミングによって、泰山タイルのテクスチャと色調の対比が際立っていて美しい。
斜めに通る敷居がアクセントになり、決め手となっています。
傍島利浩氏からのコメント
壮大な映画の予告編でも見ているような豪華さを感じました。
デザインされた扉や窓や壁の配置は、柔らかい自然光カットによって統一感が増し、コラージュ全体をうまくまとめています。
傍島利浩氏からのコメント
他の2点もとても良くまとまった写真でしたが、この写真は「あえて側面から撮影する」という心意気に感心しました。
木の高さと屋根の高さが揃い、空と芝生に挟まれた、三つの横ラインも美しく感じました。
傍島利浩氏からのコメント
泰山タイルとスイッチパネルが同系色で、シックな印象を与えています。
また限定的でシンプルな構図によって、時を経て深みを増したテクスチャをより一層感じます。
傍島利浩氏からのコメント
手すりの上部アール部分だけを切り取ることによって、吹き抜けの空間と梁のラインアップが際立ちました。 色のないモノトーンはある意味、造形写真の本質なのかもしれません。
傍島利浩氏からのコメント
この場所を撮った方はきっと少ないのではないかと思います。
肌に新鮮な空気を感じるような気持ちよさを感じました。
数年前に東京の白金台から移築された甚吉邸は、いよいよこの土地に馴染んできたのかもしれません。
傍島利浩氏からのコメント
いつまでも暑い日が続き、ようやく秋っぽくなったと感じた日に、いち早く季節を先取りしたカットです。
ローアングルによってアプローチに落ちた枯葉は密度を増し、行き着く先には美しい佇まいの甚吉邸。
映り込みを狙った他の2点も、幻想的で素晴らしいです。
傍島利浩氏からのコメント
アーチの下にアーチがあり、更に奥には扉があり、特定された位置から覗き込む視線がユニークです。
手前に手すりを置いたことにより、見逃しがちなレリーフが強調されています。
傍島利浩氏からのコメント
職人の手しごとによる木の手触りが感じられるとともに、手前の家具が、親柱と手すりと呼応し合い、重厚感が増しました。
ガチガチに決められた構図やアングルではない、ふとした瞬間の自然体ショットは居心地がよいです。