「甚吉邸 建築写真講座」の作品を公開します

2025.12.12

10月4日茨城県取手市のICI総合センターにて開催された「甚吉邸 建築写真講座」、その際に撮影された作品の数々を公開します。

どうぞお楽しみください。

【写真家 傍島利浩氏のコメント】

皆さまの撮影に対する姿や写真を拝見し、
改めて写真は「自由でよいのだ。自由がよいのだ。」と感じました。
午前の部は、ミラーレスカメラ、一眼レフカメラ、なかにはハッセルブラッドをお持ちになった方もいて、
かなり本格的な建築撮影会でした。
午後の部は、スマートフォンを利用される方が多く、感覚的に自由に、スナップ撮影を楽しんでいるように見受けられました。
今や写真を撮る行為は実に幅広いです。これを機に、それぞれのやり方で写真を追求したり、異なるデバイスや機種にもチャレンジしたりして、写真の楽しみを増やしていただければと思います。

参加者様のお名前をクリックすると各作品に飛びます。

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EMI様K様miroku03690369様N様O様OG様S様Satoryo様YS様
アドさん様上門 仁様ごろう様セーヤ様マカロン様まさや様 三田 ゆき様

※あいうえお順

EMI様

「曇天の柔らかな光と静かな時間」

曇りの日でも心地よい光あふれる空間で、実は撮影時間中もここに座って2、3時間本を読みたいなぁと思ってしまいました。

「光と影の応接間」

写真を見返してみて、ペンダント照明の形状の面白さに気が付きました。

「静寂のダイニングルーム」

照明を付けずに撮影したことで、人気のない食堂の静けさがいっそう際立ったように思います。

傍島利浩氏からのコメント

椅子の背もたれはシルエットによってフォルムが強調され、天井のレリーフは鈍い光によって拡張高く映し出されています。
甚吉邸でしか味わえない、静寂で重厚感のあるワンシーンです。

K様

「静かな空気」

光も音もデザインも、全てが静かな部屋でした。
この空気感がそのまま写ってほしいと思って撮りました。

「華やぐ気持ち」

昭和の初めに甚吉邸へ招かれた方達のことを想像しながら応接室に入りました。
華やぐ気持ちで美しい部屋を仰ぎ見た時の1枚です。

「和と洋」

和のデザインと洋のデザインが絶妙なバランスで響き合っている場面があちこちに見つかり思わず足を止めて見入っていました。

傍島利浩氏からのコメント

障子を開けて柱を見せようとする試みが新鮮に感じました。和と洋のデザインを捉えつつ、奥行きと適度な距離感もあって、外へ抜け出る視線が気持ちいいです。

miroku03690369様

「外観」

外観はハーフティンバー様式とのことだが、柱・梁の表現は控えめでシンプルな印象

「階段室ホール」

それぞれ違った表情を持つ2階各室への中心となる階段ホール。
スキップフロアが各室への期待感をもたらしている

「広間照明」

広間をやさしく照らす照明、各室の照明器具は今和次郎によるデザインで他ではなかなか見られない

傍島利浩氏からのコメント

他のどなたとも違うポイントを押さえていて、階段でも通路でもない、見逃しがちな空間を捉えています。
ちょっと思いつかないような平面構成は新鮮でした。

N様

「アーチから続く廊下」

アーチ型の入口から続く廊下。
小上がりにしているところに空間の工夫を感じました。

「食堂」

装飾天井含め色々な質感が特徴的な空間。
この時は照明がついていましたが、自然光の状態も良いと思いました。

「広間 玄関周り」

広間を形成する木彫装飾や吹き抜け付近の光の見せ方にゆとりを感じられました。

傍島利浩氏からのコメント

手前のアーチと小上がりにサンドされることによって廊下が際立ち、迷いがない建築的視点には、ぐっと引き込まれます。
他の2点も同様に、その先を感じさせるストレートフォトグラフィー。

O様

「食堂」

天井に見られる漆喰の装飾と洋風の内装、今和次郎によるダイニングテーブルという組み合わせを撮影しました。

「階段手すりと客間」

漆喰によるレリーフと数寄屋づくりの座敷という組み合わせを撮影しました。

「第二寝室の棚」

曲線を描く棚の側板と出節丸太、襖の引手という装飾の組み合わせを撮影しました。

傍島利浩氏からのコメント

棚の側板、出節丸太、襖の引き手という3点の意匠が、絶妙なバランスで整い、主張しています。斜めから狙った角度によって、床の間という局所的な空間も感じさせます。

OG様

「Repeat」

照明器具が額に写り込んだ感じがいいかなと思いました

「迷路っぽい」

住居として住んでいたらそう思わないけど、見学していると「次はどっちに行こう?」と迷う

「灯」

色味の少ない背景、凝った意匠の照明器具と温かみのある灯。

傍島利浩氏からのコメント

1枚目は、額に映り込んだ照明器具まで取り入れた、大、中、小とだんだんと小さくなっていく照明三兄弟。
2枚目は、一瞬どこにいるのかわからなくなるような、エッシャーを彷彿させるような構成。
どちらも程良い遠近感と連続性があり、とてもファンタスティックです。

S様

「窓」

光が印象に残った場所を撮りました。

「階段」

光が印象に残った場所を撮りました。

傍島利浩氏からのコメント

暗くて見えないはずだけど、見えるような気がする。
静けさが人の想像力を掻き立てる。
陰翳礼讃。

Satoryo様

「ディテールの重なり」

甚吉邸のロココ様のロカイユ装飾として優雅な曲線が建物内あしらわれていますが、応接室の建具では幾何学のような曲線で植物的装飾が施されていて印象的に思い、模様の輪郭や輪郭内の細かな凹凸感を意識して撮影いたしました。

「装飾の中で浮かびあがる」

木装飾の室内でほのかに暗く落ちついた内装のなかで、曇天によりアーチ窓のフレームや取っ手の外形線、ガラスの模様が浮かび上がる光景をおさめました。

「輪郭の奥深さ」

甚吉邸のロココ様のロカイユ装飾として優雅な曲線が建物内あしらわれていますが、応接室の建具では幾何学のような曲線で植物的装飾が施されていて印象的に思い、模様の輪郭や輪郭内の細かな凹凸感を意識して撮影いたしました。

傍島利浩氏からのコメント

撮影者の緊張感のあるフレーミングによって、泰山タイルのテクスチャと色調の対比が際立っていて美しい。
斜めに通る敷居がアクセントになり、決め手となっています。

YS様

「窓・扉・光」

さまざまな様式の開口部があり、それらがつくる光と陰の組み合わせを楽しめる空間でした。
この印象を伝えるために、特徴のある窓や扉を集めた1枚を作りました。
照明のコントロールを含むカメラの腕が未熟で、素材集めからやり直したい気がしています。

「玄関から主人を望む」

甚吉邸サイトにも似た構図の写真がありましたが、この写真では 玄関の鴨井・柱をわずかに画面に含め、また縦長にして俯瞰する構図としました。
玄関から入った客である私が、吹き抜けの上に立つかつての主人を見上げる、 そのような場面を想像した1枚としました。

傍島利浩氏からのコメント

壮大な映画の予告編でも見ているような豪華さを感じました。
デザインされた扉や窓や壁の配置は、柔らかい自然光カットによって統一感が増し、コラージュ全体をうまくまとめています。

アドさん様

「刻を越えて」

あえて正面でなく側面から撮影。
時代を越えて生き続ける甚吉邸を寄り添う大樹とシンクロさせました。

「洋の中の和」

茶室の機能もある和室をアンダー目に撮影。
基本洋館である甚吉邸のなかにある本格的な和の空間にあえて注目して、正対で撮りました。

「Back to 1934」

時代を感じさせる電話機を、同じようなカタチにくり貫かれた壁を使って額縁構図で撮影。
壁の向こうに電話機を写すことでタイムスリップ感を演出しました。

傍島利浩氏からのコメント

他の2点もとても良くまとまった写真でしたが、この写真は「あえて側面から撮影する」という心意気に感心しました。
木の高さと屋根の高さが揃い、空と芝生に挟まれた、三つの横ラインも美しく感じました。

上門 仁様

「思わず用も無いのに
入れたり切ったりしたくなる」

地のタイルと見事に呼応した彫金仕上げのスイッチ、匠の技の相乗効果

「見惚れて踏み外す恐れ有り注意⚠️」

神はディテールに宿る、用を越えてもはや彫刻作品

「生命樹」

寝るのが勿体無い、その日初めて目にするのがこの情景とは良い一日間違いない

傍島利浩氏からのコメント

泰山タイルとスイッチパネルが同系色で、シックな印象を与えています。
また限定的でシンプルな構図によって、時を経て深みを増したテクスチャをより一層感じます。

ごろう様

「曲線」

チューダー様式のため、水平・垂直方向の線で構成される屋内の中で壁に映し出される電灯の影の伸びやかさに気が付いて撮影。
写真としては、単なる電灯の写真となってしまったが、 甚吉邸を巡っている体験の中では、非常にアクセントのある場所だった。

「あか」

撮影会が終わった帰路、参加者のおひとりが、おそらく外観撮影のために建物に近づいて行ったところを撮影。
建築写真は、人が映らないことが多いが、赤い傘の魅力にひかれた。

「チューダー様式」

チューダー様式の内装を良く表す写真を撮りたいと思っていたので、水平・垂直方向の木材で構成された場所を選んで撮影。
手すりに用いられているRに加えて、影が形作る曲線が印象的だったので白黒モードを選択した。

傍島利浩氏からのコメント

手すりの上部アール部分だけを切り取ることによって、吹き抜けの空間と梁のラインアップが際立ちました。 色のないモノトーンはある意味、造形写真の本質なのかもしれません。

セーヤ様

「代わる景色」

東京から茨城に移築された甚吉邸は、現代の技術を用いて復元された。
素材は当時と代わり景色も代わる。
甚吉は何を見て過ごしたか現代の景色と重なりながら想像するのは楽しいと感じた。

「いろどり素材」

チューダー様式が日本の技術と融合した事で幾何学的な美しさと素材の彩りが重なり合う独特な魅力を写真で表現しようとした。

「下から見る甚吉邸」

建物がもつ幾何学な美しさをダイナミックに表現しようとした。

傍島利浩氏からのコメント

この場所を撮った方はきっと少ないのではないかと思います。
肌に新鮮な空気を感じるような気持ちよさを感じました。
数年前に東京の白金台から移築された甚吉邸は、いよいよこの土地に馴染んできたのかもしれません。

マカロン様

「季節の移ろいに佇む」

敷地に入ると凛と佇む甚吉邸が印象的でした。
朝晩の涼しさ、秋の始まりの合図のような落ち葉と一緒に

「窓辺にたゆたう記憶」

鏡越しに穏やかな光がさすカーテンが印象的でした

「あの日の記憶」

アンティーク家具の鏡に映り込んだ特徴的な屋根が重なって見えたことが歴史を重ねたストーリーに思えたことが印象的でした。

傍島利浩氏からのコメント

いつまでも暑い日が続き、ようやく秋っぽくなったと感じた日に、いち早く季節を先取りしたカットです。
ローアングルによってアプローチに落ちた枯葉は密度を増し、行き着く先には美しい佇まいの甚吉邸。
映り込みを狙った他の2点も、幻想的で素晴らしいです。

まさや様

「空間の融解」

今和次郎の照明デザインと木の装飾の溶け合いと空間の荘厳さに魅了された

「手仕事の美」

職人の手による泰山タイルを張り巡らせた浴室は圧巻であり温かみを感じた。

「時の継承」

装飾が施された手すりのアーチと階段の白壁のアーチの連続性とその先の扉は、甚吉邸継承の時の重みを物語る。

傍島利浩氏からのコメント

アーチの下にアーチがあり、更に奥には扉があり、特定された位置から覗き込む視線がユニークです。
手前に手すりを置いたことにより、見逃しがちなレリーフが強調されています。

三田 ゆき様

「手しごと」

藤森先生の「建築たんてい」を読んで、いつか見てみたいと思っていた今先生の作品がふんだんに詰まった応接室。
こちらのお部屋はどこもかしこも凝りに凝った見どころだらけですが、住まいとしての落ち着きも感じられ、ツヤツヤな家具達は当時の職人さん達の手しごとによるものなんだなと思いを馳せました。

傍島利浩氏からのコメント

職人の手しごとによる木の手触りが感じられるとともに、手前の家具が、親柱と手すりと呼応し合い、重厚感が増しました。
ガチガチに決められた構図やアングルではない、ふとした瞬間の自然体ショットは居心地がよいです。