壁ー1グランプリ2025に出場しました
・カベワンGPについて
10月4、5日に埼玉県のものつくり大学にて、木造耐力壁日本一を決める大会、カベワンGPが開催されました。毎年、構造設計部では木造の設計力・技術力向上を目指して、この大会に参加しています。カベワンGPとは木造耐力壁の日本一を決める大会で、20年間続いた耐力壁ジャパンカップを前身とし、今年で第八回目となる歴史のあるイベントです。毎年、大学の研究室、専門学校、ハウスメーカー、金物メーカーなど、様々な木造の専門家が参加しています。今年は計13チームが参加しました。
各参加チームはそれぞれが設計した耐力壁を大会当日にその場で自分たちで施工します。施工した壁を二体並べて、土台を固定して設置し、壁の桁同士を油圧ジャッキで繋ぎ、綱引きのようにしてどちらかが破壊するまで引張り合わせて対決させます。トーナメント形式で対決を繰り返し、最後に勝ち残った壁がトーナメント優勝となります。
しかし、トーナメント優勝の壁はあくまでも最も耐力(強度)の高い耐力壁であるということであり、それだけでは総合優勝とはなりません。最大耐力、耐震性、デザイン性の合計得点を、耐力壁を作り解体するのにかかる総コスト(材料費+加工費+施工人工+解体費)で割った値が最も高い耐力壁が、最もコストパフォーマンスに優れた耐力壁としてカベワンGP総合優勝となります。
▲耐震点の算出方法(左の壁の方が耐力は高いが、右の壁の方が靭性(粘り強さ)があり耐震点は高くなる)
昨年度のカベワンGPでは、前田建設工業チームは総合優勝を獲得しました。そこで今年は総合優勝ではなく、最も強度の高い耐力壁に送られるトーナメント優勝を目指すこととしました。
・今年度の耐力壁のコンセプト
毎年、カベワンGPに出場するにあたって、単に良い結果を目指すだけではなく、挑戦的な面白い構造の耐力壁を設計しています。今年は、アラミド繊維という高耐力・高剛性の繊維で作られたロープを使って、滑車の機構を取り入れた耐力壁「カッシャマン」で出場しました。

▲丸鋼にロープをかけて滑車としての挙動を期待
また今年からは金沢工業大学河原研究室との共同チーム「前田建設金工大支店」として参加し、河原研究室には、予備試験や金物の作成、施工方法の検討などを行ってもらいました。予備試験では、事前の解析結果と実際の変形との比較や破壊性状の観察を元に耐力壁の改良を行います。
左:予備試験での破壊性状、これを元に部材断面の調整・補強などを行う
右:事前の解析結果
・大会当日の様子
大会当日は自分たちの手で耐力壁を施工しなければなりません。例年、前田建設工業チームは大会で最小人工での施工となるように事前によく施工方法を検討して挑んでいますが、今年は木材加工のクリアランスが小さかったこともあり、例年よりも施工に時間がかかってしまいました。

完成した耐力壁
一回戦目ではTEAM HOSEI(MIYATA LAB)with AQとの対戦でした。相手の耐力壁は土台にパララムという強度の高い木質材料を使い、柱脚をビスで固定した高強度の期待される耐力壁でしたが、接戦の末、前田建設工業チームの耐力壁の勝利となりました。

二回戦目はAQチーム匠(東京大学稲山名誉教授+篠原商店)との対戦でしたが、一回戦目の対戦でロープが伸びてしまっていて、一回戦よりも耐力が出ず敗北となりましたが、最終的には大会で3位の耐力となりました。

興味のある方は当日の対戦の様子などが大会のホームページで公開されていますので、視聴してみてください。



