壁-1グランプリ2024総合優勝! ~木造耐力壁日本一への挑戦 (第2回)

2025.03.10

第2回:前田建設チームの過去の耐力壁

2019年
One for Wall, Wall for One/Scrum Wall (最大耐力32.9kN/最大変位206.8mm)
圧縮筋交いにより剛性(硬さ)を確保し、複数の柱により柱脚の引抜き力を分散させることを目指しました。柱脚は前田建設が開発した6軸加工機により溝加工を施したLVLで、土台と柱を挟み込むようにして固定しました。
 従来の加工機で加工した軸材の加工精度と6軸加工機の加工精度に差があり、うまく嵌合させることができず、壁の厚みが大会規定を超えてしまい、大きなペナルティを受け予選敗退となってしまいました。

柱脚パネル

▲柱脚パネルは6軸加⼯機で加⼯し、表⾯には社名とロゴを掘り込んだ

2020年
リベンジャーズ/Le:Wall (最大耐力42.4kN/最大変位106.8mm)
前年度の土台と柱を挟み込むディテールを改良し、土台と桁の曲げを、LVLパネルの片持ち梁のようにして処理することで耐力の向上を目指しました。また前年度の反省を活かし、圧縮筋交いを引張筋交いで挟む簡易な納まりとし、施工性にも配慮しました。

柱脚パネル

▲前年度より柱脚パネルを改良、部材数を減らすことで施工性を向上させた

2021年
今年こそ最適会 ―淘汰・再生・突然変異を経た最強集団―/たぶん最適解?
(最大耐力54.5kN/最大変位112.8mm)
トポロジー最適化(設定した設計空間において最も効率のよい材料分布を見つける最適化手法)を用いて設計したパネル重量が最小となるような有機的な形状のパネルを6軸加工機により実現させました。パネル形状はRhinocerosと+Grasshopperというプログラムソフトを用いて形状解析を行い、デザイン性や柱への取りつき方を考慮するため、柱とパネルの取り合い位置を変数としてパネル内部の孔の面積が最大化される形状をトポロジー最適化によって算出しました。
金物を使用せず、パネルにフレームをはめ込むだけの納まりのため、三人で3分20秒という早さで施工しました。
全く金物を使用しない耐力壁にも関わらず、54.5kNという高耐力を記録しました。

テーパー加⼯

▲複雑な曲線や孔周囲のテーパー加⼯を6軸加⼯機により実現

6軸加⼯機での加⼯

▲6軸加工機での加工の様子、ルーターで削り出すように加工している

2022年
前田建設~やっぱりこっちが最適会~/最適解 その先へ
(最大耐力43.6kN/最大変位220.1mm)
前年度に引き続きトポロジー最適化+6軸加工機の組み合わせによる耐力壁を設計しました。前年度よりLVLパネル厚を薄くし軽量化した代わりに、前々年度のような柱脚パネルを追加して靭性の向上を目指しました。
前年度より最大耐力は落ちたものの、トーナメント準優勝を達成しました。

柱脚パネルの追加

▲柱脚パネルの追加により靭性がアップした

パネル形状を最適化

▲パネルにかかる応力が均一になるようにパネル形状を最適化した

2023年
MHK教育テレビ~まえださんといっしょ~/ひっぱり3兄弟
(最大耐力30.2kN/最大変位315.2mm)
総合優勝を狙って金物を使用しない靭性のある耐力壁を目指しました。三段の引張筋交いがバランスよく順に降伏するように、応力に応じて部材のサイズを大中小と変化させました。また引張力が一本の柱に集中しないように、それぞれの縦材と横材を斜め材のみを介して接合させる納まりとしました。
 残念ながら総合優勝は逃してしまったが、狙い通りに筋交いが順に降伏させ靭性を稼いだことや、独自の設計思想を評価され、構造審査員特別賞を受賞しました。

パネル

▲柱脚部が順に降伏し、脆性的な破壊を起こさずに加力限界まで達した

第3回は、カベワンGP2024のコンセプト決定と試験体による検証です。