壁-1グランプリ2024総合優勝! ~木造耐力壁日本一への挑戦 (第1回)
2025年10月5、6日に埼玉県ものつくり大学にて、木造耐力壁日本一を決める大会が開催され、前田建設チーム(カベフロニア・ホールディングス)の耐力壁「^ (キャレット)」が、総合優勝と耐震部門賞を獲得しました。
その様子を全5回に分けて、2019年の過去参加回から振り返って掲載します。
第1回の今回は「カベワンGP 2024 前田建設が総合優勝!」です。
第1回:カベワンGP2024前田建設が総合優勝!
10月5、6日に埼玉県ものつくり大学にて、木造耐力壁日本一を決める大会、カベワンGP2024が開催され、前田建設チーム(カベフロニア・ホールディングス)の耐力壁「^ (キャレット)」が、総合優勝と耐震部門賞を獲得しました。
・カベワンGPとは
カベワンGPとは木造耐力壁の日本一を決める大会で、20年間続いた耐力壁ジャパンカップを前身とし、今年で第7回目となる歴史のあるイベントです。毎年、大学の研究室、専門学校、ハウスメーカー、金物メーカーなど、様々な木造の専門家が参加しています。
各参加チームはそれぞれが設計した耐力壁を大会当日にその場で自分たちで施工します。施工した壁を二体並べて、土台を固定して設置し、壁の桁同士を油圧ジャッキで繋ぎ、綱引きのようにしてどちらかが破壊するまで引張り合わせて対決させます。トーナメント形式で対決を繰り返し、最後に勝ち残った壁がトーナメント優勝となります。
しかし、トーナメント優勝の壁はあくまでも最も耐力(強度)の高い耐力壁であり、それだけでは総合優勝とはなりません。最大耐力、耐震性、デザイン性の合計得点を、耐力壁を作り解体するのにかかる総コスト(材料費+加工費+施工人工+解体費)で割った値が最も高い耐力壁が、最もコストパフォーマンスに優れた耐力壁としてカベワンGP総合優勝となります。
▲耐震点の算出方法(左の壁の方が耐力は高いが、右の壁の方が靭性(粘り強さ)があり耐震点は高くなる
・前田建設チームとしての参加
構造設計部は木造の設計力・技術力向上を目指して、このカベワンGPに第2回大会から参加し、今年で6度目の出場となりました。過去には、構造設計部だけでなく、ICI総合センターや意匠設計の職員、社外からも木造を専門に学ぶ学生や木造設計事務所のOBの方なども参加してもらい、様々な視点から木造について学べる機会となっています。
通常の構造設計の業務とカベワンGPの大きな違いとして、自分で設計したものを自分の手で施工することと、実際に破壊してしまうことが挙げられます。これらを経験できることがカベワンGPに参加する大きな意義であると思っています。
通常の物件ではプロの職人さんが施工してくれますが、カベワンGPでは自分たちで施工する必要があるため、いかに簡単に施工できるかを考えて設計しないと、大会当日に自分自身が大変な思いをする羽目になります。初出場した年は施工がうまくできずにペナルティを受けてしまい、予選敗退となってしまいました。その年以降は、設計の初期から施工手順を考えながら設計を行ったうえで、材料の加工クリアランスを細かく指定し、打つのに慣れがいるビスはなるべく使わないようにするなど、誰でも簡単に施工できるということを第一に考えて設計しています。
実際の木造物件においても、仕上げ材などとの取り合いが複雑な箇所については、どのように施工するかを考えて設計を行わないと上手く納まらないことが多いですが、カベワンGPでの経験を積み重ねることによって、無理のない納まりを提案できるようになるのではないかと思います。
▲今年の施工の様子 2人で11分という今大会最少人工で施工した
普段設計している建物は、基本的には壊れないように設計しますが、カベワンGPでは設計した壁が絶対に壊れることになります。建築の設計においては、どの程度の力まで耐えられるか、どの部材がどの順番で壊れるかなどを検討していますが、その検討が正しいかどうか実際に壊してみて確認できるという点でもカベワンGPは貴重な機会であると思います。
また自分たちの耐力壁だけでなく、他のチームの耐力壁がどうやって壊れるかを予想しながら観戦するのも楽しみの一つです。自分たちで実験するとなると耐力壁一体だけでも大変な手間ですが、カベワンGPでは二日間で十数体もの耐力壁を見ることができます。他チームの方にどのような考え方で設計したかを聞きながら一緒に破壊性状を観察することで、多くのことを学べます。

▲対戦後は破壊した耐力壁の観察を行った
第1回はカベワンGPの概要説明を中心に紹介しました。
次回は第2回:2019年から2023年のカベワンGPを振り返るです。お楽しみに!